電力コラムCOLUMN
私たちが普段何気なく使っている電気は、日常生活だけではなく、世の中のあらゆる物に消費されています。「電気」といえば、「エネルギー」として使われるイメージがありますが、最近ではテクノロジーによって、あらゆる可能性が示されています。
その中の1つが「電気を使ったタンパク質の生成」です。この技術が実用化されることによって、何が可能になるのかなどをまとめていきます。
この電気によるタンパク質の生成を研究してきたのは、フィンランドのVTT技術研究センターとラッペーンランタ工科大学によるものです。
こちらの研究施設では、「空気」と「電気」を使用することによって、タンパク質を生成することができる研究を行なってきました。
簡単な概要としては、水を電解することによって、水素が発生します。水素と二酸化炭素、ミネラルを混合したものを微生物に与えることによってタンパク質が生成されます。熱処理を加えれば、粉状のタンパク質が完成します。
つまり、電気と空気、水、微生物などのみを使って、タンパク質を生成することができます。本来タンパク質は動物や植物などから摂取しますが、この研究によって、タンパク質を生み出すことが可能になります。
人間が生きていく上で欠かすことができないタンパク質ですが、これの摂取方法がこの先大きく変化していくことが伺えます。
なんともワクワクする研究ですね!
この研究を土台にして、フィンランドのスタートアップ企業「ソーラー・フーズ」が電気と空気から食用のタンパク質を生成し、実用化に向けた研究を進めています。
同社は、この実用化に際して、200万ユーロを調達しており、2021年を目処にタンパク質の生産体制を整えようとしています。
また、欧州宇宙機関(ESA)と提携することによって、宇宙食への応用も視野に入れています。宇宙船のように大量の食糧を積み込むことができない中でも、宇宙生内でタンパク質を生成することができれば、より長期的な任務も可能となります。
動物や植物に頼ることなく、タンパク質を生成することが可能になるため、ヴィーガンの人たちでも食すことができます。
また、従来の動物や植物など、生産が土地や気候に左右されるタンパク質が環境に左右されることなく安定的に供給ができるとなれば、世界の食糧事情に大きな影響を与えることも指摘されています。
繰り返しになりますが、これらの研究において、タンパク質の生成に使用されているのは、空気と電気、水、微生物といったものだけです。環境を破壊せず、天然資源に頼ることなくタンパク質を生産できます。
これによって環境に優しい持続可能な食糧供給が実現できると考えられています。さらにはあらゆる分野に大きなインパクトを与えることは間違いありません。
最近では、牛のげっぷに含まれるメタンガスによって地球温暖化が加速することが指摘されてもいます。畜産業がそういった中で、批判も受けるといった状況にひんしていますが、これらの規模を縮小し、徐々に生成されたタンパク質への移行がスムーズに進めば、こういった問題を解決することもできるでしょう。
電気を使ったタンパク質の生成という研究は、単なるテクノロジーの進歩だけで済む話ではなく、世界規模であらゆる影響を与える可能性を秘めている新技術なのです。
電気を使ったタンパク質の生成に関する研究を紹介していきました。電気を使ってタンパク質を作るという、なんとも近未来SFのような世界観が今まさに現代の技術によって実現されようとしています。今後の食糧問題や地球環境問題において、重要な研究でもあるので、ぜひ注目して知ってみてください。