電力コラムCOLUMN
低圧電力と高圧電力の差は「契約アンペア数」にあります。
低圧電力は契約容量が50キロワットに満たず、主に一般的なオフィスや工場が契約しています。高圧電力は契約容量が50キロワット以上であり、大型のショッピングモール、大きな医療施設、工場などが契約しています。
電力会社にある「変電所」を介して、電圧が落ちながら電気が私たちのもとに届きます。
低圧電力の場合、柱上変圧器(トランス)で200ボルトか100ボルトになって届きます。
高圧電力の場合、柱上変圧器の手前から、高圧受電設備(キュービクル)に電気が送られて、その高圧受電設備にて200ボルトか100ボルトに変圧されます。
高圧電力は「第一種電気工事士資格」がないと扱うことができません。
この資格があると、高圧電力の契約をしているビルや工場などでも電気工事をすることができますから活動の幅が広がります。
一方、「第二種電気工事士」があると、低圧電力の契約をしている小さな施設などで作業をすることができますが、高圧電力関連の工事をすることは何があっても許されません。
先述の説明で「第一種電気工事士のほうが、第二種電気工事士よりもグレードが高い」ということがお分かりいただけたかと思います。
では、「第二種電気工事士の資格を持たないまま、いきなり第一種電気工事士の資格を取る」ということはできるのでしょうか。
答えは、少し複雑で「第一種電気工事士の資格試験を受けることはできるが、免状は発行されないという事になります」
なぜなら「電気工事士としての5年間の実務がないと免状を取ることができない」というルールがあるからです。※電気科・電気工事科の大学・専門大学を卒業していれば3年でOKです。
ですから、「第二種電気工事士の資格を取る→5年(3年)の実務経験を積む→第一種電気工事士の資格試験を受ける→合格し免状を発行してもらう」というのがセオリーとなります。
ただし、「第一種電気工事士と第二種電気工事士の資格試験を同時に受けて、両方合格しておく」ということは可能です。この場合、第二種電気工事士としての実務経験を既定の年数積めば、その時点で自動的に「免状を発行してもらう条件」をクリアしたという扱いになります。
いずれにせよ、「実務経験ゼロの段階でいきなり高圧電力を扱うことはできない」ということは改めて念押ししておきます。少なくとも「低圧電力での経験」が3年間必要です。
○計算問題
第二種電気工事士試験に関しては単独の公式を使うだけで解ける問題が多いです。
しかし、第一種電気工事士試験となると複数の公式を組み合わせないと答えが出ない問題が増えます。
○暗記問題
第二種に「器具などの名称を単純に覚えていればいい」という問題があるとすると、第一種の場合は、そこにさらに「器具の名称と、その略称を覚える」という壁が加わるというイメージです。
問題によって傾向は変わりますが、第一種の問題のほうが複雑であると考えましょう。
○技能試験
第二種の場合はシンプルですが、第一種となるとやはり「複数の接続」があったり、「二か所で違う技術」が求められたりします。
第二種電気工事士試験と第一種電気工事士試験を両方受けた経験がある人のなかには、「計算・暗記問題の難易度の上がり方に比べると、技能試験のほうが大きく上がったと思う」と語る方が少なくありません。
転職サイトなどを見ると「電気工事士を求めている企業」のうち、3~4割程度は第一種電気工事士のみに限定しているという印象です。
「電気工事士(第一種限定)」などと記載している企業もあります。
しかし、「第二種電気工事士資格をお持ちで、かつ3年以上の実務経験がある人」などと書いている企業も少なくありません。これはほぼ、「第一種電気工事士を持っていてくださいね」というメッセージだと言っていいでしょう。
また、「第二種電気工事士以上」と記載している企業もありますが、もちろん第一種を持っていたほうが雇用されやすくなります。
気になる給料の差ですが、第一電気工事士と第二種電気工事士とでは、やはり違いが出ると考えてください。
実は第一種でも第二種でも「基本給」は変わらない企業が多いのですが、「資格手当」には差をつけてあるところが大半です。
これによって年間5万円前後の差がつきます。
「意外と差が小さい」と感じたかもしれません。
しかし、そもそも「第一種電気工事士の資格を持っている人」のほうが、基本給が高い企業に就職しやすいと言えます。
電気工事士の給与は15~40万円(経験によってはこれ以上)ですから、資格による差はかなり大きいです。