電力コラムCOLUMN
発電を行うには何かしらの「力」が必要です。
水力発電の場合は、「水が落下する(流れる)力」によって発電をしています。
高い位置から低い位置へと水を勢いよく落とすことで、ポンプ水車を回転させ、発電機をその回転のパワーで稼働させて電気を作ります。
水力発電のタイプとしては
流れ込みタイプ:発電水車を水路や河川等に置く
貯水タイプ・調整池タイプ:ダムに蓄積させた水を流して電気を作る
などがあります。
調整池・貯水タイプには、「ダムに蓄積した水を使うため、水量・発電量のコントロール」ができるというメリットがあります。
つまり「電力のニーズに沿って発電を行うことが可能」ということであり、実際に現在一番メジャーな水力発電となっています。
先ほどもお伝えした通り、水力発電は本質的には「水が流れる力」を使っているだけですから、「エコ」の観点においてとても優れています。
「風力発電」や「太陽光発電」も自然の力を使っていますから環境には優しいですが、これらの発電形式には「発電費用が水力発電よりも高い」というデメリットがあります。
また、水力発電は発電量を調整できるのですが、基本的に水量・水流をコントロールするだけでそれが可能ですし、調整するにあたって温室効果ガス等を発生させることがありません。
そして、「天候の影響をほぼ受けない」というメリットもあります。
ダムの水を使いますから、極端に降雨量が少なければ十分に発電できなくなる可能性があります。
しかし、太陽光発電は太陽の影響を、風力発電は風の影響を受けますから、「相対的に見れば、水力発電は天気のことをほぼ気にしなくて良い発電形式である」と言えるでしょう。
水力発電を行うためには、膨大な量の水が必要です。
「水さえあればいい」と感じるかもしれませんが、十分に発電できるほどの水を確保するのはそれほど簡単な事ではありません。
「水の調達」に関して安定性を持たせるためには、大規模な水力発電所は山間地に作らなければなりません。そして大抵のケースでダムも欠かせませんから、周囲の自然環境に多大ない影響を与える可能性が高いです。
また、「大きな建物」であるがゆえに、ほとんどは遠隔地に作られます。
そのため「送電費用」が大きくなりますし、当然建設コストもかなりのものになってしまいます。
そして、「水力発電を長期的に稼働していると、徐々に土砂がダムの底に蓄積していき、発電効率が悪くなる」というデメリットがあります。
ですから、「同じコストで、同じ発電量を維持し続けるのは難しい」ということも計算に入れなければなりません。
それから、そもそも「今の日本で大規模なダムを新規に作ることは非常に難しい」という事実もあります。
水力発電「所」と表現するとかなり大きな建物を想像するかもしれません。
ですが技術的には、例えば「幅が1メートルにも満たない用水路」でも、水力発電装置を取り付けることができます。
現在、太陽光パネルを取り付けて、家庭で電気を生み出している人が少なくありません。
それと同じように水力発電装置を設置して電気を自作することは、現実的な事なのでしょうか。
水利権を取らなければなりません
水力発電装置を設置する上で一番難しいのは、「法的処理をクリアすること」です。
「河川水」を使って発電を行うのであれば、河川管理者から「水利権」を取る必要があります。水利権とは「『水を大々的に使っても良い』という許可」のことだと考えてください。
実は「大きな水力発電所」を作るときでも、「小さな発電装置」を設置するときでも、法的処理の手順・労力・煩雑さにそれほど差はありません。
ちなみに、風力発電や太陽光発電に関しては、法的な処理はかなり楽です。
だからこそ普及しているという側面があるはずです。
コストパフォーマンスが悪い
小水力発電(1000キロワットまでの水力発電のこと)の発電量は少なく、導入コストを回収するまでに20年程度を要します。
また、管理維持するのも簡単ではありません。
ゴミ、枯れ葉、木の枝などをきちんと処理しないと、いずれ発電できなくなる可能性があります。
そして、定期的な稼働チェックやメンテナンスも欠かせません。
とても一人でこなせる仕事ではありません。
小水力発電に期待が集まっていることは確かです
しかし、小水力発電にも、記事の前半で紹介したようなメリットがあることは確かです。
また、「小さいぶん、色々な場所に設置できる」という利点もあります。
そのため、
・水利権などに関する規制緩和を進める
・小水力発電に関する諸々の技術を向上させる
・人々に小水力発電のメリットや必要性を周知していく
ということができれば、小水力発電を取り巻く状況は改善されていくことでしょう。