電力コラムCOLUMN
1919年:日本で波力発電関連の実験が実施されました。
1965年:「益田式航路標識ブイ」という、世界初の波力発電装置が実用化されました。
1970年代:オイルショックをきっかけに波力発電が注目されるようになりました。風力発電や太陽光発電などと並ぶ「代替可能エネルギー」として、波力発電の研究・開発も進められていました。
2010年代:資金不足や石油価格の安定などを理由に、日本国内での波力発電研究はあまり行われなくなっていました。しかし、この頃から再び研究・開発・実験が盛んになり、2016年の夏には、波力発電施設が岩手県久慈市の漁港に設置されました。
現在では、三菱重工や三井造船などが、これまでの波力発電装置をブラッシュアップした新しい装置の開発を行っています。
波力発電分野はこれからも発展していくものと予想できます。
「波の運動エネルギーを使って電気を生み出す仕組み」のことを波力発電と言います。
波力発電には主に4種類あります。
波のエネルギーを使って空気を動かし、それによってタービンを回転させて電気を生み出します。
発電装置内部の「空気室」に海水が流れ込み、水面が揺れるときの力によって空気が押し出され、その空気が風となってタービンを回します。
「波エネルギー」から「振り子運動エネルギー」を作って、油圧モーターを回して電気を生み出します。
海に「振り子式受圧板」を接触させておくことで、波の力によって直接「振り子運動エネルギー」を作ることが可能です。
振り子運動エネルギーが「油圧発生装置」を動作させ、油圧モーターが回ります。
ちなみに可動物体タイプの波力発電に関しては、タービンを利用しません。
「海面」と「貯溜池」の高さの違いを活用して、タービンを回して電気を作ります。
防波堤を使って貯溜池と海を隔離します。
そして波が防波堤を乗り越えると、貯溜池に届いて「水面差」が生み出されます。
この水面差を解消しようと、海水が自然に動き、その動きによってエネルギーが発生して、タービンが回転します。
「回転している物体が、外的な力によって傾いたときに、元に戻ろうとする力」を活用した波力発電方式です。
おもちゃの「コマ」をイメージすると理解しやすいはずです。
現状では「振動水柱タイプ」の波力発電が広く普及していますが、近年では「ジャイロタイプ」の波力発電が注目されています。
・面積効率がいい
ジャイロタイプ以外の波力発電においては、ややこしい機構や空気を利用して、「直線的である波の運動」を、「発電機の回転」へと変換させています。
これを実現するためには波力発電施設が大きくなってしまう傾向にあります。
ですが、ジャイロタイプの波力発電の場合は、「高速で回る円盤」を「大きな浮き」に設置するだけで電気を生み出すことができます。
円盤が波に揺られて傾きますが、「円盤を元に戻そうとする回転運動」が起きますので、発電することが可能なのです。
したがって、波力発電施設が小さくて済みます。
「単位面積当たりの発電量」で言えば、太陽光発電のおよそ2000~3000パーセント、風力発電のおよそ500パーセントにのぼります。
・天候の影響を受けにくい
※以降のメリットはジャイロタイプ以外にも当てはまります。
例えば「太陽光発電」や「風力発電」の発電効率や発電量は天候に左右されます。
ですが、波力発電であればほぼ常時安定して電気を生み出すことが可能です。
意識しにくい事かもしれませんが「全く波がないタイミング」がほとんど存在しないからです。
・日本は波力を確保しやすい
日本は島国ですから、波力を確保しやすいと言えます。
続いては、(ジャイロタイプ以外にも該当する)波力発電のデメリットや課題を挙げていきます。
・コスト面
波力発電装置を設置するにあたっては、潜水作業を避けることができません。
そのため陸上に設置する場合に比べて、多くの労力・コストが発生する事になります。
また、大きな波力を受けたり、塩害が起きたりするリスクもありますから、「維持コスト」も高くなると言えます。
・安全面
波力発電所は基本的に「近海」や「防波堤」に設置することになります。
そのため津波や台風が発生して、継続的に大きな波を受けたとしても、崩壊しないような強度を出さなければなりません。
・漁業とのバランス
「波力発電所の導入に適している場所=海流が盛んに流れる場所=漁場」という事になります。
そのため波力発電所の設置を強行すると、漁業に直接的な悪影響を与えることになってしまいます。したがって、漁業関係者ときちんと話し合い、理解を得て、互いに協力する必要があると言えます。