電力コラムCOLUMN
風力発電は、その名の通り風の力を電気に変換する発電方式です。
欧米よりは導入が遅れていますが、21世紀に入った頃から日本国内でも積極的に導入されるようになりました。今後の発展が望まれている再生可能エネルギーの一種です。
「風力発電機(風車)」の上部分に「ブレード」という羽があります。
そこに風が当たることで、そのブレードが回ります。ブレードの回転が「動力伝達軸」を介して、「ナセル」という装置に伝達されます。
構造的に言えば、ナセルの内部に動力伝達軸が通っていて、その軸に「増速機」「ブレーキ装置」「発電機」がついているという事になります。
「増速機」がギアによって回転数をアップさせます。
そして、「発電機」がその回転を電気に変換してくれます。
ここで発生した電気は「塔体」の内部を介して、「変圧器(トランス)」により電圧を上げられて、配電線・送電線を通して、送電されることになります。
「ブレーキ装置」は普段は使いませんが、点検を行う前や、台風が発生したときなどにブレードの回転をストップさせる役割があります。
まず、環境への負担が少ないです。
発電するにあたって有害物質や二酸化炭素が発生しません。
それでいて、「風」が尽きることはもちろんありませんから、今後地球環境がどのように変化しても電気を生み出してくれます。
そして、風さえ吹いていれば夜間でも発電可能です。
しかも、夜間に発電するにあたって、何の工夫もする必要がありません。
また、意外と「エネルギーの変換効率」が高いです。
入力されたエネルギーを「1」とする場合、風力発電であれば「0.2~0.4程度」の電気を生み出すことができます。
太陽光発電で0.2、木質バイオマス発電で0.2、地熱発電で0.1~0.2ほどとなっていますから、風力発電は高効率であると言えます。
ちなみに水力発電が0.8前後と、非常に効率が良いです。
今後、風力発電に関する研究・開発が進んでいけば、水力発電レベルとはいかないまでも、さらにエネルギーの変換効率を上げることもできるかもしれません。
また、「風車を大きくして、風を高い位置で受ければ、発電効率がよくなる」という単純な方法論が存在するということも、風力発電のメリットの一つと言えるでしょう。
風によって電気を発生させますから、風力が弱いと発電量が大幅に落ちることになります。
したがって、年間通して一定以上の風の発生が期待できる場所に、発電所を設置する必要があります(九州、東北、北海道の山の上や海沿いなど)。
そして、台風などの影響で風が強すぎる場合も発電することができません。
また、風車が回ることによって機械音や低周波音が発生します。
そのため人が多いエリアのそばに風力発電所を設置してしまうと、騒音問題が生じるかもしれません。
また、「周囲の景観を損なう」というリスクもありますから、風力発電所を設置できる場所は限られています。
ただ、むしろ風車を町おこしのための名物として活用している地域もありますので、周辺住民などときちんと相談することが重要であると言えます。
日本は「2030年までに、電力発電方法のうちの1.7パーセントを風力発電にする」ことを目標としています。しかし今のところ、その3分の1ほどしか風力発電の導入が進んでいません。
また、「風力発電コスト」は、世界平均で見れば「1キロワットにつき約9円」となっていますが、日本では「1キロワットにつき約14円」となっていますので、まだコストを下げる余地があると言えます。
この先、新型風車の開発・運営を安定して継続することができる、風車メーカーの育成を進めていき、日本国内における「風車産業」を発展させていくことが重要です。
さらに、風車のメンテナンスの効率をアップさせたり、運用ができる人材を育成したりしていく必要もあります。
(風力発電以外の方式の発電についても、人材不足を課題としているものが少なくありません)
また、陸上風力発電の開発が進行し、「陸上で風力発電所を設置できる場所」が尽き始めています。
そのため、「海上」を使った、いわゆる「洋上風力発電」への期待が高まっています。
洋上であれば、200メートルに近いような巨大な風車を設置することも可能です。
ですが、「海上の一般領域を長期的に使用することに関するルール」が今のところ存在していません。
その影響で、現状の「占有可能期間」は3~5年程度となっており、中期~長期的なプランを立てにくい状況となっています。
また、漁業・海運業などの「先行して海を利用していた人々」との調整をするための明確なルールもありませんか。そのため、「調整のためのコスト」と「予測し切れないリスク」をどのように扱うかという課題も残っています。