電力コラムCOLUMN
2019年9月、旭化成の吉野彰さんがノーベル化学賞を受賞されたというニュースが飛び込んできました。
日本に住む私たちには本当に嬉しいニュースで、毎回ノーベル賞の時期になると「次は誰だろう」とワクワクする方もおられることでしょう。
今回吉野氏がノーベル化学賞を受賞されたのは、「リチウムイオン電池」の研究開発の功績が認められたものです。
リチウムイオン電池といえば、私たちが日常的に利用しているスマートフォンや電気自動車にバッテリーとして採用されており、今や生活に欠かせないものとなっています。
素晴らしい性能だけでなく、環境問題に対しても大きく貢献できるリチウムイオン電池について、説明していきます。
普段、私たちがよく目にする電池は「マンガン電池」「アルカリ電池」の2種類。
「マンガン電池」は安く購入することができることから、置時計やリモコンなどに多く利用されています。
連続で使用せずに時間を置いて使用すると電圧が回復する特徴を持っており、上記のように連続で使用せずに微力な電力で動く機器にはマンガン電池が適しているでしょう。
一方で「アルカリ電池」はマンガン電池の約2倍程度の容量を持っているので、大きな電流が必要な機器にはアルカリ電池が適しています。
繰り返し充電して使う機器には、ニカド電池やニッケル水素電池があり、シェーバーなど多くの電化製品に使われています。
さまざまな電池のなかで近年注目されているのが「リチウムイオン電池」です。
「リチウム塩」を素材にしており、ニッケル水素の約3倍の電圧を持ちながら軽量という特徴を持っています。
スマホやノートパソコン、近年では電気自動車やハイブリッド車、更には国際宇宙ステーションでも使われていることから性能の高さが伺えますね。
家庭用蓄電池においてもリチウムイオン電池が活用されていますので、太陽光発電や売電において日々利用している人も多いかも知れません。
リチウムイオン電池といってもさまざまな種類があり、1991年に販売された最初のものは「コバルト酸リチウム」が採用されていました。リチウムは当時とても高価なので、その点が課題であるとされてきました。
その後、「マンガン酸リチウム」「リン酸鉄リチウム」「三元系」「ニッケル系」などが開発され、近年では「マンガン酸リチウム」に「チタン酸リチウム」をかけあわせたものが商品化されています。
課題であった熱暴走を起こしにくいことが特徴的で、長寿命・急速充電・入出力の用量・寒冷地での使用可能など優れた性能を有しています。
ノーベル化学賞を受賞した吉野さんの会見を拝見しましたが、開発した最初はまったく売れなかったそうです。
実はリチウムイオン電池が開発されて販売されたのは1991年。
もうすでに30年近く経っているのですね。
それが2016年では世界市場が2兆円を突破し、2020年には5兆円を突破し、022年には7兆円産業になるだろうと予想されています。
5兆円市場の背景には「高性能化」と「地球温暖化問題の解決」があります。
リチウムイオン電池の「高性能」とされるのは、電池自体のサイズは小さいのにも関わらず、大容量のエネルギーを貯めこむことができる点にあります。
人工衛星やロケットなどにおいてもリチウムイオン電池が活用されています。
国際宇宙ステーション(ISS)においても日本製のリチウムイオン電池が採用されており、古い電池を順次新しいものに変更しているそうです。
特に近年では性能だけでなく安全性も向上し、低コスト化もされてきました。
省エネで注目されている家庭用蓄電池においても、価格が少しずつ安くなっているのが経済産業省の調査でも分かっています。
今後もますますリチウムイオン電池は注目されることでしょう。